共同研究・競争的資金等の研究課題

2021年7月 - 2023年3月

アクティブゲルで切り拓く細胞の対称性と運動原理の非平衡力学

日本学術振興会  科学研究費助成事業  挑戦的研究(萌芽)

課題番号
21K18605
体系的課題番号
JP21K18605
担当区分
研究代表者
配分額
(総額)
6,370,000円
(直接経費)
4,900,000円
(間接経費)
1,470,000円

細胞はエネルギーを消費し,変形しつつ自律的に運動する複雑な分子システムである.本研究ではアクチン細胞骨格とミオシン分子モーターのアクティブゲルを細胞サイズの油中液滴に封入し,その自律的運動の原理をマイクロ流体デバイスならびにソフトマター物理学の見地から明らかにする.アクチン繊維とミオシン分子モーターからなるアクトミオシン細胞骨格は自律的に動く柔らかなゲル(アクティブゲル)であり,細胞の極性形成やオルガネラの配置制御に重要な役割を果たしている.しかし,生細胞では数多くのシグナル伝達系が機械刺激への応答に関与しており,シンプルな原理に基づく理解を妨げる要因となっている. この問題を解決するため,細胞がもつ対称性の制御の本質を失わず,細胞内環境の複雑性を軽減した人工細胞モデルを確立する. 現在までに,アクチン細胞骨格,ミオシン分子モーターを内包した人工細胞にある種の脂質分子を添加することで自律的に運動する液滴となることを見出した.この自律運動に不可欠なダイナミクスが液滴内で発生するアクチン波である.このアクチン波の発生によって液滴が駆動力を得るメカニズムを調べるため,液滴と基盤との接触面積を変えると運動速度が増大することがわかり,内部のアクチン波の進行から基盤接触を介して力が伝達されていることがわかった.この力伝達を詳細に調べるためにアクティブゲルにもとづく理論モデルを構築した.人工細胞の膜直下でアクトミオシンがアクチン波を繰り返すことで,ずり応力が基盤に伝達されて反作用として液滴に作用する摩擦力が自発的な運動を駆動する.このメカニズムが実際に成立するか,微小流体デバイスを用いて実験的に検証を行ったところ,摩擦力と粘性摩擦とのバランスで定まる運動速度の幾何学的関係を説明できたことから,理論と実験が一致する結果を得ている.

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-21K18605
ID情報
  • 課題番号 : 21K18605
  • 体系的課題番号 : JP21K18605