講演・口頭発表等

2018年5月24日

後腹膜軟部肉腫の初診時症状と臨床診断について-初診時の診療科による差異-

第91回日本整形外科学会学術総会
  • 田地野崇宏
  • ,
  • 紺野愼一
  • ,
  • 山田 仁
  • ,
  • 箱﨑道之
  • ,
  • 金内洋一

記述言語
日本語
会議種別
ポスター発表
開催地
神戸市

【はじめに】 後腹膜軟部肉腫は , 増大するまで無症状であり , 非特異的な症状で発症することが多く , 診断確定時には巨大となっていることが少なくない . 本研究の目的は ,
後腹膜軟部肉腫の初診時症状と臨床診断の実態を調査することである .
【対象と方法】 1993 年から2016 年までの間に診療した後腹膜原発の高悪性度軟部肉腫27 例を対象とした . 性別は ,男性19 例 , 女性8例, 初診時年齢は, 中央値53( 最年少
10 , 最年長85)歳であった . 病理診断は , 脱分化型脂肪肉腫が最多で4 例 , 悪性末梢神経鞘腫 , 骨外性Ewing 肉腫骨外性間葉性軟骨肉腫が各3 例 , 未分化多形肉腫 , 平滑筋
肉腫 , 胞巣型横紋筋肉腫 , 線維形成性小円形細胞腫瘍が各2 例, その他6 例であった. 最大径は, 中央値11( 最小7,最大32) cm であった . 以上を対象に診療録から後方視的
に調査した .
【結果】 発症から医療機関を初診するまでの期間は , 中央値1 カ月(最短0 日 , 最長7 カ月)であった . 初診した診療科は , 整形外科が15 例と最も多く , 次いで内科6 例 , 外科4 例であった . 初診時の症状は , 疼痛が19 例と最多であった . そのうち14 例(殿部痛・下肢痛各5 例 , 背部痛4 例)は整形外科を初診し , 疼痛のなかった8 例中7 例が整形外科以外を初診していたのと対照的であった(p=0.009) . 初診時に後腹膜腫瘍と診断されたのは , 整形外科以外を受診した12 例では11 例だったのに対して , 整形外科を受診した15 例では7 例しかなく , 有意に少なかった(p=0.019) .
また , 4 例は , 画像検査後に他科疾患(婦人科腫瘍2 例 , 静脈血栓1 例 , 回盲部膿瘍1 例)と診断され , 他科に紹介されていた .
【考察】 本研究の結果から , 後腹膜軟部肉腫患者は , 腰背部痛や下肢痛で整形外科を初診することが多いが , 腫瘍と診断されなかったり , 他科疾患と診断されたりすることが
多いことが判った . 後腹膜軟部肉腫患者の早期診断には ,腫瘍を専門としていない一般の整形外科医に対する啓発が必要であると考えられた .