論文

2018年12月

肥満症の病態形成における神経ネットワークの役割

肥満研究
  • 宇野 健司

24
3
開始ページ
144
終了ページ
149
記述言語
日本語
掲載種別
出版者・発行元
(一社)日本肥満学会

本来、生物界では哺乳動物の生命機能、とくに代謝恒常性は、体内から分泌される生理活性物質や鋭敏な反応性をもつ神経系を介して、各臓器が調和をもって連携することで維持される。しかし、現代社会の特性ともいえる摂取カロリーの過剰や運動不足を背景に、現代人の肥満割合が増加して久しい。肥満症を呈した状況では代謝恒常性維持機構が破綻してしまい、糖尿病・脂質異常症・高血圧に代表されるメタボリックシンドロームの病態増悪につながる。そして、こうした現状が、さらなる高齢化社会を進む本邦では医療経済的にも大問題となる。一つに、生体内の代謝恒常性は、消化管、脂肪組織や肝臓から分泌される生理活性分泌タンパクにより制御され、これらの発見と機能解析は本邦の貢献は非常に大きい。一方で、そうした研究の潮流の中にあって、われわれは肝臓での代謝情報が自律神経ネットワークを介して全身各臓器の代謝を協調的に制御するという臓器間・栄養素間代謝ネットワーク機構が存在することを世界に先駆けて発見してきた。生命個体には未だ解明されていない神経ネットワークは幾多も想定され、われわれも含めて今後はその探索と生理的・病態的機能解明が待たれる。そうした新たな発見が、高齢化社会でさらに増加するであろう肥満症、加齢を背景としたサルコペニア・フレイルに向けた対策の一助になると期待される。(著者抄録)

ID情報
  • ISSN : 1343-229X
  • 医中誌Web ID : 2019114662

エクスポート
BibTeX RIS