共同研究・競争的資金等の研究課題

1994年

基盤の縦ずれ断層運動に伴う表層地盤破壊伝播メカニズムに関する研究


資金種別
競争的資金

1999年の台湾集集(Chi-Chi)大地震,トルコ・コジャエリ大地震では地表に地震断層が出現し,地震動による被害のみならず,多くの構造物が甚大な被害を受けた。現在日本では,断層の進展に伴う大きな地盤変形を考慮した構造物設計はダムや原子力発電所などの重要な構造物に限られており,道路,トンネル,橋梁などの線状構造物には設計に取り入れられていない.一方米国では,主要断層,あるいは明瞭な小断層から離して構造物を建てるというカリフォルニア州の活断層法1)だけである.しかし,日本のように国土が狭く都市部に比較的軟弱な地盤層が形成されている地域では,この活断層法は適用できない.そこで,断層の進展に伴う大きな地盤変形を考慮した構造物設計法を確立するためには,まず基盤の断層運動が表層地盤にどのように破壊伝播するのかを明らかにしなければならない.
既に地表地震断層の研究は行われており,その研究は理学分野としては空中写真判読による地形学やトレンチを行う地質学,工学分野としては相似則に基づいた模型実験や力学的モデルを構築した数値解析に大別される.模型実験としては1gの砂箱実験を行ったCole and Lade2)や上田・谷3),谷山・渡辺4) ,1gの粘土箱実験を行ったD.Bray,B.Seed and H.Bolton5),50gの遠心載荷模型実験を行ったRoth, Scott and Austin6)が挙げられる.数値解析としてはFEM解析を行った谷7)や谷山・渡辺4),D.Bray,B.Seed and H.Bolton5)が挙げられる.既往の研究では基盤の断層変位量に伴うせん断層が地表面に到達した位置について明らかにしているが,せん断層の発達性状を含む変形場は定性的な評価にとどまっており,地表面については明らかにされていない.
本研究は基盤の縦ずれ(逆・正)断層運動に伴う表層地盤の破壊伝播メカニズムについて,模型実験や数値解析の工学分野の研究による地盤断面の観察,基盤上の直応力分布,地表面状況の観察の観点から解明することを目的としている. 表層地盤はその下の地盤,すなわち基盤に比して軟弱であり,1(m)四方程度の地盤を局所的にとらえると粒状体で構成されているといえる.そのため,粒状体材料は模型実験でアルミ棒や砂を用い,数値解析ではMDEM8)(修正個別要素法,Modified Distinct Element Method)に円柱要素を用いることにした.