2021年4月 - 2024年3月
う蝕原性細菌が誘発する全身疾患の制御に向けた新たな病原メカニズムの解明
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
う蝕の主要な原因細菌である Streptococcus mutansは、約10~20%の菌株において表層にコラーゲン結合タンパク(collagen-binding protein; CBP)を発現している。CBP陽性S. mutansは循環器疾患にも関与することが示されてきているが、詳細については未だ不明な点が多い。本研究では、脳血管疾患患者から採取した臨床検体およびカイコモデルを用いて、CBP陽性S. mutansと循環器疾患に及ぼす影響について検討を行った。
まず、CBP陽性S. mutansと脳血管疾患との関連性に着目した研究として、高血圧性脳出血のため入院している患者197名を対象にデンタルプラークからS. mutansの培養を行なった。次に、分離されたS. mutansから細菌DNAを抽出し、PCR法を用いてCBPをコードする遺伝子の検出を試みたところ、CBP陽性S. mutansを有する患者は30名(15.2%)存在した。また、CBP陽性S. mutansの存在は、MRI検査の拡散強調画像により示される微小脳出血の出現率と有意に相関することが明らかとなった(P<0.001)。
口腔内には生菌だけでなく死菌も存在することから、死菌処理したCBP陽性S. mutansの循環器疾患における病原性を評価することにした。主要な抗菌薬であるアモキシシリンで死菌処理したCBP陽性S. mutansはコラーゲン結合能を有するとともに、この死菌を投与したカイコにおいて生存率の低下が認められた。それに対して、唾液中の抗菌成分であるリゾチームで死菌処理した菌では、コラーゲン結合能およびカイコモデルにおける病原性は認められなかった。これらの結果から、CBP陽性S. mutansはある種の抗菌薬で死菌となった後も、循環器疾患における病原性を有する可能性が示唆された。
まず、CBP陽性S. mutansと脳血管疾患との関連性に着目した研究として、高血圧性脳出血のため入院している患者197名を対象にデンタルプラークからS. mutansの培養を行なった。次に、分離されたS. mutansから細菌DNAを抽出し、PCR法を用いてCBPをコードする遺伝子の検出を試みたところ、CBP陽性S. mutansを有する患者は30名(15.2%)存在した。また、CBP陽性S. mutansの存在は、MRI検査の拡散強調画像により示される微小脳出血の出現率と有意に相関することが明らかとなった(P<0.001)。
口腔内には生菌だけでなく死菌も存在することから、死菌処理したCBP陽性S. mutansの循環器疾患における病原性を評価することにした。主要な抗菌薬であるアモキシシリンで死菌処理したCBP陽性S. mutansはコラーゲン結合能を有するとともに、この死菌を投与したカイコにおいて生存率の低下が認められた。それに対して、唾液中の抗菌成分であるリゾチームで死菌処理した菌では、コラーゲン結合能およびカイコモデルにおける病原性は認められなかった。これらの結果から、CBP陽性S. mutansはある種の抗菌薬で死菌となった後も、循環器疾患における病原性を有する可能性が示唆された。
- ID情報
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- 課題番号 : 21H03149
- 体系的課題番号 : JP21H03149