共同研究・競争的資金等の研究課題

2021年4月 - 2025年3月

脂質ナノ粒子の細胞内輸送の分子動力学:核酸エンドソーム脱出の分子機構

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(B)  基盤研究(B)

課題番号
21H01880
体系的課題番号
JP21H01880
配分額
(総額)
17,420,000円
(直接経費)
13,400,000円
(間接経費)
4,020,000円

脂質ナノ粒子(LNP)のエンドソーム脱出を分子動力学(MD)シミュレーションで解析し、その分子機構を明らかにすることを目的としており、当該年度においては、まず、核酸と脂質の複合構造であるLNPとエンドソーム膜の分子モデリングを中心に行った。dsDNAに標準系の脂質(1,2-dilinoleyloxy-3-dimethylaminopropane (DLin-MC3-DMA),コレステロール(Chol), ホスファチジルコリン(PC)脂質)を混合してできたLNPのMD計算を行った。カチオン性脂質(DLin-MC3-DMA)のpH変化に伴うイオン化状態の変化を考慮した粗視化(SPICA)力場を作成し、約30nmの直径のLNPのMD計算を実行した。DLin-MC3-DMAのイオン化状態の変化は、LNP構造を大きく変化させ、特にdsDNAのLNP内包状態が変化することがわかった。また、エンドソーム膜のモデリングを行い、実験情報に合わせた脂質組成を持つエンドソーム膜モデルをSPICA力場で作成した。コレステロールを含む5種の異なる脂質の混合膜としてモデルを作成し、大きなドメイン構造を持たないことを確認した。さらに、LNPとエンドソーム膜の相互作用を確認する分子動力学(MD)シミュレーションを行った。LNPは中性条件ではエンドソーム膜と積極的な相互作用を示さなかったが、酸性条件においては静電相互作用によってエンドソーム膜に強く吸着することがわかった。吸着後の融合プロセスは非常に長時間を要するため、律速段階であるLNPとエンドソーム膜間の吸着表面の脱水和を人工的にさせ、その後の融合の進展を観測した。現在、融合シミュレーションの途中であるが、数µs以上かけて構造緩和をしながら融合が進む様子が見られた。次年度以降にも継続して融合MD計算を実行する必要がある。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-21H01880
ID情報
  • 課題番号 : 21H01880
  • 体系的課題番号 : JP21H01880

この研究課題の成果一覧

論文

  1
  • Teppei Yamada, Yusuke Miyazaki, Shogo Harada, Ashutosh Kumar, Stefano Vanni, Wataru Shinoda
    Journal of Chemical Theory and Computation 19(23) 8967-8977 2023年11月21日  査読有り最終著者責任著者

講演・口頭発表等

  1