2021年4月 - 2025年3月
脂質ナノ粒子の細胞内輸送の分子動力学:核酸エンドソーム脱出の分子機構
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
脂質ナノ粒子(LNP)のエンドソーム脱出を分子動力学(MD)シミュレーションで解析し、その分子機構を明らかにすることを目的としており、当該年度においては、まず、核酸と脂質の複合構造であるLNPとエンドソーム膜の分子モデリングを中心に行った。dsDNAに標準系の脂質(1,2-dilinoleyloxy-3-dimethylaminopropane (DLin-MC3-DMA),コレステロール(Chol), ホスファチジルコリン(PC)脂質)を混合してできたLNPのMD計算を行った。カチオン性脂質(DLin-MC3-DMA)のpH変化に伴うイオン化状態の変化を考慮した粗視化(SPICA)力場を作成し、約30nmの直径のLNPのMD計算を実行した。DLin-MC3-DMAのイオン化状態の変化は、LNP構造を大きく変化させ、特にdsDNAのLNP内包状態が変化することがわかった。また、エンドソーム膜のモデリングを行い、実験情報に合わせた脂質組成を持つエンドソーム膜モデルをSPICA力場で作成した。コレステロールを含む5種の異なる脂質の混合膜としてモデルを作成し、大きなドメイン構造を持たないことを確認した。さらに、LNPとエンドソーム膜の相互作用を確認する分子動力学(MD)シミュレーションを行った。LNPは中性条件ではエンドソーム膜と積極的な相互作用を示さなかったが、酸性条件においては静電相互作用によってエンドソーム膜に強く吸着することがわかった。吸着後の融合プロセスは非常に長時間を要するため、律速段階であるLNPとエンドソーム膜間の吸着表面の脱水和を人工的にさせ、その後の融合の進展を観測した。現在、融合シミュレーションの途中であるが、数µs以上かけて構造緩和をしながら融合が進む様子が見られた。次年度以降にも継続して融合MD計算を実行する必要がある。
- ID情報
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- 課題番号 : 21H01880
- 体系的課題番号 : JP21H01880
この研究課題の成果一覧
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論文
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Journal of Chemical Theory and Computation 19(23) 8967-8977 2023年11月21日 査読有り最終著者責任著者
講演・口頭発表等
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The 6th International Conference on Molecular Simulation (ICMS2023) 2023年10月7日 招待有り