2021年4月 - 2024年3月
運動による転写制御の分子機構の解明
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
高齢社会の現在、全身の筋力低下(サルコペニア)は重要な課題である。運動はサルコペニアの予防作用を有しており、運動の骨格筋への作用機構を分子レベルで解明することは新しいサルコペニアの予防・治療薬の開発につながるため、非常に有意義である。運動の刺激は骨格筋の遺伝子発現を変化させるが、運動刺激を骨格筋の遺伝子の発現変化へと変換する分子機構には不明な点が多い。運動による転写制御には、1回の運動による一過性の転写誘導と継続的な運動による持続する転写変化に分けることができる。継続的な運動トレーニングによって引き起こされた骨格筋の形質変化は、しばらくは維持されることから、エピゲノムによる制御機構の関与が考えられる。遺伝子発現は、転写因子とエピゲノム修飾酵素によって制御されるため、運動によって活性化される転写因子とエピゲノム修飾酵素を同定することが重要である。本研究ではトレッドミル運動後のマウスから骨格筋を採取し、核を単離した上で、定量プロテオミクス解析、ならびにリン酸化プロテオミクス解析を行った。その結果、多数の候補遺伝子を同定することができた。続いて、各候補遺伝子が運動誘導性転写制御を行うかどうか検証するために、Crispr/Cas9を用いて、各遺伝子の欠損C2C12筋芽細胞株を作製し、in vitroでの運動モデルによる転写制御機能を検証した。これらの結果、運動誘導性転写制御を担う複数の遺伝子を同定することができた。
- ID情報
-
- 課題番号 : 21K11677
- 体系的課題番号 : JP21K11677