2007年9月
延岡市における企業城下町的体質の変容 ―地方自治体の産業政策の転機を事例として―
経済地理学年報
- 巻
- 53
- 号
- 3
- 開始ページ
- 29
- 終了ページ
- 45
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- DOI
- 10.20592/jaeg.53.3_265
- 出版者・発行元
- 経済地理学会
本稿は,旭化成の企業城下町である宮崎県延岡市を対象に,地方自治体の産業政策の転機を取り上げ,企業城下町の構成主体の対応の多様性に注目して,企業城下町的体質がどのように変容したのかを明らかにした.旭化成の影響力の低下は,地域経済だけではなく地方政治にも及び,その両者が相俟って産業政策の変化をもたらしている.1950〜1960年代において,旭化成は生産拠点を拡散した一方で,同社延岡地区に対する投資を減少させた.労使協調的な労働組合「全旭連」が延岡市政に対して強い発言力を持っていたため,旭化成の投資促進を目的として旭化成優遇政策がとられた.1970〜1980年代において,繊維事業を主力とする同社延岡地区は構造不況により縮小・再編が相次ぎ,建設業をはじめとする下請企業は深刻な影響を被った.旭化成の影響力低下の中で不況対策を求める商工・建設業者が産業政策の変更を求め,民社党もその動きに加わることで支持を広げた.1990年代以降において,旭化成の政治的影響力はさらに低下するが,同社新規事業の成長が産業構造転換を促すものと再評価され,同社を核とした産業発展を目指す政策へと回帰した.
- リンク情報
- ID情報
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- DOI : 10.20592/jaeg.53.3_265
- ISSN : 0004-5683
- CiNii Articles ID : 110007652633
- CiNii Books ID : AN00071152