論文

2015年1月

症例報告 単孔式腹腔鏡補助下に切除した狭窄型虚血性小腸炎の1例

新潟医学会雑誌
  • 須藤 翔
  • 亀山 仁史
  • 中野 雅人
  • 島田 能史
  • 野上 仁
  • 若井 俊文
  • Sudo Natsuru
  • Kameyama Hitoshi
  • Nakano Masato
  • Shimada Yoshifumi
  • Nogami Hitoshi
  • Wakai Toshifumi
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129
1
開始ページ
38
終了ページ
44
記述言語
日本語
掲載種別
出版者・発行元
新潟医学会

【目的】虚血性小腸炎は, 動脈硬化などを背景とした血流障害により, 小腸に虚血性病変が発生する疾患の総称である. 虚血性病変の治癒過程で瘢痕狭窄をきたす場合があり, 外科的治療の対象となる. 今回我々は, 単孔式腹腔鏡補助下手術を施行し, 良好な経過をたどった狭窄型虚血性小腸炎の1例を経験したので報告する. 【症例】患者は60歳, 男性, 高血圧, 脂質異常症の既往を有していた. 腹痛を自覚し当院を受診し, 腹部CT検査および小腸内視鏡検査の所見から虚血性小腸炎と診断された. 保存的治療により症状は軽快したが, 約1か月後に再度腹痛を自覚した. 腸閉塞と診断され, 経鼻イレウス管による腸管減圧が行われた. イレウス管造影検査では, 回腸に約10cm長の狭窄像を指摘された. 虚血性小腸炎による瘢痕狭窄であり, 保存的治療による改善は困難と考えられ, 単孔式腹腔鏡補助下手術が施行された. 臍を3cm切開し, ラッププロテクターミニタイプ, E・Zアクセスを装着した. 鉗子2本を用いて, 小腸全体を手繰るように観察した. 回腸終末部より約80cm口側の回腸に, 発赤と壁の硬化を認めた. 同部が狭窄部位であると判断し, 回腸を約18cm部分切除した. 病理組織学的検査では, 特異性炎症や悪性所見は認められず, 虚血性変化として矛盾の無い所見が認められた. 術後経過は良好で, 術後12病日目に退院した. 【考察】虚血性腸炎は左側結腸に好発し, 小腸病変の発生頻度は比較的低いと報告されている. しかし, 虚血性小腸炎は狭窄による腸閉塞をきたしやすいため, 外科的治療を要する割合が高い. 小腸は後腹膜や他臓器に固定されておらず, 体腔外への導出が容易であることなどから, 一般的に小腸疾患は腹腔鏡下手術の良い適応とされている. しかし, 腸閉塞をきたしやすい本疾患に対して, 腹腔鏡下手術が施行された症例の報告は少ない. 本症例では, 術前にイレウス管を留置し腸管の減圧が得られたこと, 小腸内視鏡検査やイレウス管造影検査により, 病変の局在や範囲を把握できていたことなどから, 腹腔鏡下手術が施行可能であると判断した. より整容性に優れた術式として単孔式腹腔鏡補助下手術を選択し, 安全に施行し得た. 【結論】狭窄型虚血性小腸炎は腸閉塞を呈することが多いが, イレウス管により腸管減圧が得られ, 術前に病変の局在や範囲が確認された状態であれば, 単孔式腹腔鏡補助下手術は安全に施行可能である.

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http://ci.nii.ac.jp/naid/120005842661
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  • ISSN : 0029-0440
  • CiNii Articles ID : 120005842661
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