論文

2017年

訪問リハビリテーション利用者における在宅生活中止となる原因の実態調査

理学療法学Supplement
  • 大沼 剛
  • ,
  • 吉松 竜貴
  • ,
  • 原 毅
  • ,
  • 橋立 博幸
  • ,
  • 阿部 勉

2016
開始ページ
1345
終了ページ
1345
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.14900/cjpt.2016.1345
出版者・発行元
公益社団法人 日本理学療法士協会

<p>【はじめに,目的】訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)の効果として日常生活活動の向上や離床時間の延長などが報告されており,訪問リハは安定した在宅生活を継続するための一助として期待できる。一方で,訪問リハを必要とする要介護者は,何らかの心身機能低下を有しており,入院や死亡などによって在宅生活が中止となることも少なくない。これまでに,こうした訪問リハ利用者の入院や死亡に関する十分な報告はなされていない。そこで,本研究は訪問リハ利用者が死亡や入院に至った原因を後方視的に調査し,実態を明らかにすることを目的とした。</p><p></p><p>【方法】2005年9月1日~2015年12月31日(10年4ヶ月)の間に訪リハを新規に利用開始し,期間中に訪問終了となった393名(開始時年齢78.7±11.1歳)を対象とした。対象者の訪リハ開始時における基本情報および身体的,社会的情報を訪問看護システム「コスモスVer1.80」,カルテ,指示書及び居宅サービス計画書から収集した。年齢,性別,要介護度,主疾患,罹患年数,疾病の有無といった個人的要因のほか,身体的要因として歩行自立度,認知症高齢者の日常生活自立度,社会的要因として同居の有無,サービス利用に関わる要因として終了理由,訪問継続期間についてのデータを収集した。終了理由は,死亡,入院,施設入所,目標達成,その他に分類した。また死亡および入院の場合は,原因となった疾患や状態を指示医もしくは家族,ケアマネジャーより聴取した。死亡や入院で終了となった者のうち原因ごとに群分けし,χ2検定および対応のないt検定を用いて,各調査項目を比較した。【結果】終了者393名のうち,終了理由別の人数は死亡が79名,入院が105名,施設入所が36名,目標達成が37名,その他が136名であった。死亡や入院の原因となった疾患や状態を調べたところ,186名中164名で原因の調査が可能であり,肺炎や肺炎疑いが26名,転倒や転倒に関連する骨折が17名,心血管系疾患が14名,呼吸器系疾患が14名,脳血管障害発症が11名,消化器系疾患が11名,老衰が8名,がん発症や悪化が7名などであった。χ2検定の結果,最も多かった肺炎が原因で死亡や入院となり終了した群では,その他の原因で終了となった群と比較し,認知症を有している,要介護度が重度,歩行が困難な者の割合が多かった。</p><p></p><p>【結論】訪問リハ利用者の死亡や入院の原因となった疾患や状態異常を調べたところ,肺炎が最も多く,次いで転倒や転倒に関連する骨折,心血管系や呼吸器系,消化器系の状態悪化であった。平成26年高齢社会白書によると65歳以上の高齢者の主な死因別死亡率では,がん,心疾患,肺炎,脳血管疾患,老衰の順に多いとされている。地域在住高齢者の安定した在宅生活継続を支援するためには,訪問リハ利用者のリスク管理において,これらの疾患や状態異常(特に肺炎や転倒)に十分留意する必要があることがわかった。</p>

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.14900/cjpt.2016.1345
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130005609315
ID情報
  • DOI : 10.14900/cjpt.2016.1345
  • CiNii Articles ID : 130005609315

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