共同研究・競争的資金等の研究課題

2004年 - 2006年

動物細胞における新規アセチル化およびメチル化蛋白質の同定とその機能解析

日本学術振興会  科学研究費助成事業 特別研究員奨励費  特別研究員奨励費

課題番号
04J11640
配分額
(総額)
2,800,000円
(直接経費)
2,800,000円

1.分子シャペロンのアセチル化
本研究ではHsp90のコシャペロンの一つであるactivator of Hsp90 ATPase(Aha1)をアセチル化タンパク質として同定した。Aha1のアセチル化部位はN-末端領域のlysine-3であり、アセチル化酵素はCBPおよびTIP60、脱アセチル化酵素はHDAC6およびSIRT1/2であった。HDAC6ノックダウンによりAha1のアセチル化レベルが顕著に増加したことから、特にHDAC6によるAha1の脱アセチル化を詳細に解析した結果、Aha1は熱ショックやプロテアソーム阻害などの刺激によりHDAC6との結合が解離し、アセチル化が亢進することが判明した。Hsp90もHDAC6により脱アセチル化修飾を受けることが報告されており、このことからHsp90:Aha1複合体がHDAC6による機能調節を受けることが考えられた。実際、Hsp90とAha1の結合はアセチル化によつて阻害され、またAha1によるHsp90活性化もアセチル化により抑制された。以上から、nDAC6によるアセチル化調節はHsp90のみならず、Aha1にも起こり、Hsp90複合体の活性を調節していることが明らかになった。
2.アクチン結合タンパク質のアセチル化
アセチル化タンパク質の探索の結果、アクチン結合タンパク質cortactinを同定した。CortactinはF-actin結合ドメインを有し、アクチン形成に重要な役割を担っている。MS解析によりアセチル化部位はF-actinとの結合に必須なcortactin repeat領域であることが判明した。このリピートドメインは6+1/2の繰り返し配列からなり、7カ所のlysine(lysine-87/124/161/198/235/272/309)が全てアセチル化されることを確認した。HAT過剰発現によるin vivoアセチル化を調べたところ、アセチル化酵素はCBPであることが示された。また、同様の方法により脱アセチル化酵素がclass III HDACであるSIRT1であることを明らかにした。Cortactinは細胞質に局在するタンパク質であるにも関わらず、そのアセチル化/脱アセチル化酵素が核タンパク質であったことから、cortactinが核・細胞質間をシャトルしている可能性が考えられた。そこで核外輸送タンパク質CRM1の特異的阻害剤であるレプトマイシンB(LMB)を処理し、cortactinの局在を観察したところ、cortactinは核に蓄積した。さらに、LMBを処理したHeLa細胞ではSIRT1ノックダウンにより顕著にアセチル化が亢進したことから、cortactinが核内でアセチル化、脱アセチル化修飾を受けることが示された。また、アセチル化部位はF-actin結合ドメインであったことから、アセチル化部位の変異体を用いてF-actin結合実験を行った。その結果、アセチル化はF-actinとの結合を阻害することが判明した。shRNAベクターを用いてcortactinをノックダウンした後、WTおよび7KR,7KQ変異体を過剰発現させた安定発現細胞を作製し、運動性をboyden chamber assayにより測定した。その結果、WTに比べ7KQでは顕著に運動性の低下が観察された。以上から、cortactinのアセチル化はF-actinとの結合を阻害し、細胞の運動性を低下させることが明らかとなった。

ID情報
  • 課題番号 : 04J11640