福島の河川における放射性物質の10年とこれから
IER International Symposium Fukushima 10 years; Forest, River, Ocean, and Food -Remaining issues for restoration-
- ,
- 開催年月日
- 2021年10月
- 記述言語
- 英語
- 会議種別
- 国・地域
- 日本
福島第一原子力発電所事故により、森林など陸上に沈着した放射性物質は、水の流動に伴って斜面から河川へ、最終的には海へ輸送される。すなわち、河川は放射性物質の再移動の場として重要な役割を担っている。このため、福島の様々な河川を対象として、河川中の溶存態あるいは懸濁態の放射性セシウム観測が行われてきた。事故直後からの観測的な研究は、阿武隈川の$^{137}$Cs濃度が2012年から2021年までの間で約8割低下した事を明らかにした。高瀬川や請戸川における観測結果は、大規模な出水による河川の水と土砂移動が$^{137}$Csの輸送に大きく関与していることを明らかにしている。特に、河川敷土砂の洗い出しあるいは汚染が少ない土砂の堆積により、河川敷の空間線量率は低下した。また、河川から海洋へ流出した$^{137}$Csは、沿岸域における一時的な$^{137}$Cs濃度上昇に寄与している事も明らかとなった。近年では、河川における溶存態$^{137}$Cs濃度を決定する要因が、森林を流れる渓流部と平地を流れる中下流では異なる可能性も指摘されている。事故から10年間で明らかになった知見を紹介し、チェルノブイリを例に取り今後の河川中放射性物質動態研究に関する展望を議論する。