共同研究・競争的資金等の研究課題

2018年4月 - 2021年3月

生活史研究とフィールドワークの新展開

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
18K03000
配分額
(総額)
1,300,000円
(直接経費)
1,000,000円
(間接経費)
300,000円

生活史(ライフ・ヒストリー)とは,インタビューなどをもとに特定の人物の人生の歩みをくわしく記録したものである。生活史はオーラル・ヒストリーとも呼ばれ,社会科学の多くの分野で活用されている。本研究の目的は,生活史研究の新たな方法論を構築するとともに,それをふまえたフィールドワーク研究に着手することである。今年度は,生活史作品の制作過程(インタビュー,文書史料照合,編集執筆)を洗い直す分析をおこない,方法論を構築する作業を進めた。主要な知見を以下に要約する。インタビューの語り手は,その人生において実質的に無限といってよいほど数多くの出来事を体験している。一方,インタビュー時間は有限である。語り手は,数多くの過去の出来事を取捨選択し口述する。この取捨選択のあり方が生活史研究の成果を左右する。取捨選択の観点になるのは往々にして既成の通念である。語り手が,既成の通念に依拠して出来事を取捨選択し,既成の通念に合致する出来事だけを口述することがありえる。このような口述にもとづいて制作された生活史作品は学術的価値が乏しい。この事態を防ぐには,インタビューにおいて語り手から出来事を具体的に描写する口述を引き出すことが有効である。生活史研究の意義は,インタビューにおいて出来事を具体的に描写する口述を引き出し,それをもとに既成の通念とは異なる新たな解釈を生み出すことにある。そのためにはインタビューで聞き手が適切な質問を発して介入することが必要となる。

ID情報
  • 課題番号 : 18K03000