2011年11月
知的障害者の口腔衛生に顔面口腔体操の及ぼす影響
日本咀嚼学会雑誌
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- 巻
- 21
- 号
- 2
- 開始ページ
- 100
- 終了ページ
- 110
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 出版者・発行元
- (NPO)日本咀嚼学会
知的障害者は健常者に比べ口腔衛生状態が悪く、同年代の健常者と比べ、歯の喪失が早く現在歯数の少ないことが報告されている。喪失歯による食事形態の制限や審美性の欠如などで社会生活上の不都合の生じることが多い。そのため、健常者以上に歯科疾患の予防は重要である。われわれは、知的障害者の顔面の動きが乏しいことに着目し、このことが知的障害者の口腔衛生状態悪化の一因であると考えた。そこで、顔面運動により口腔の自浄作用を促すことは知的障害者の口腔衛生状態を改善するという仮説をたて、そのことを明らかにする目的で研究を行った。知的障害者授産施設に通所する21名の知的障害者を対象に、歯科衛生士が約1分の顔面口腔体操を指導し、3ヵ月間にわたり月曜日から金曜日まで毎日1回実施させた。口腔衛生状態は、う蝕活動性試験(カリオスタット)、前歯唇面の歯垢付着面積および歯肉の炎症指数によって評価した。体操開始後、歯肉の炎症指数には反映されないものの、前歯部唇面の歯垢付着域は減少した。また、う蝕活動性は調査開始時、危険域〜注意域であったが、体操開始初週に安全域〜注意域に低下し、体操期間中はその値を維持していた。一方、口唇閉鎖力や口腔の運動速度や巧緻性、顔面の可動性など口腔の運動機能は体操後も変化しなかった。以上から、知的障害者に顔面口腔体操を実施することにより、口腔の自浄作用が促進し、口腔衛生状態を改善させることが示唆された。(著者抄録)
- ID情報
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- ISSN : 0917-8090
- 医中誌Web ID : 2012191559