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2012年4月 - 2012年4月

激震時に柱の降伏を防ぐ柱脚機構を有する鉄骨ラーメン構造の終局設計法の確立


一般的な中低層鉄骨ラーメン構造物では,上屋構造の柱,梁に鋼構造部材,基礎梁にRC部材が用いられ,柱脚には埋め込み型柱脚,露出型柱脚等の工法が用いられる。前者の工法は柱脚の回転剛性が高く,柱脚固定に近いため,最下層の水平層剛性が高く,層間変形角が小さくなるものの,上層に比べて柱の脚部と柱頭での作用曲げモーメントのバランスが悪く,脚部の作用曲げモーメントは柱頭に比べて大きくなり,脚部で降伏してしまう。鉄筋の納まり上,基礎梁の断面を大きくするか,基礎梁にハンチを設けなければならない。さらに,鉄骨建て方を基礎梁の工事の前に行わなければならないため,鉄骨部材の製作時間が十分でなく,その間の工事工程が遅れることも少なくない。一方,露出型柱脚は半剛接合となるため,柱頭の曲げモーメントが大きくなるだけでなく,最下層の層間変形も大きくなることから,この層の柱断面を大きくするか,柱脚を弾性固定金物等で基礎梁に緊結し,固定度を上げる必要がある。多くのアンカーボルトが必要となり,厳しい施工精度が要求されるとともに,基礎梁鉄筋との納まりが複雑となる。いずれも,最下層柱の降伏は避けられない。柱梁耐力比が大きければ,梁が柱よりも先行して降伏するものの,塑性変形性能の小さい柱が梁よりも先にその塑性変形限界に達し,耐力低下を起こす2)。軸力の大きい最下層柱で塑性ヒンジ回転量が部材の安定した塑性変形の限界に達し,耐力低下を生じれば,構造物の倒壊に至る可能性がある。E-Defenseによる実大4層鉄骨ラーメン構造物の倒壊実験では,建築基準法に準拠した構造物に1995年兵庫県南部地震JR鷹取駅記録の100%の地震動を入力した際,最下層柱の脚部及び柱頭で局部座屈を生じ,最下層に損傷集中したため,構造物は倒壊した。
そこで,関連論文1)3)4)では図1(c)に示すようにRC基礎梁からRC柱を立ち上げ,上部鉄骨柱と下部RC柱を簡易接合し,鉄骨支点部で地震時の曲げ応力の反曲点とする新しい柱脚機構を提案した。この機構は,柱脚が基礎梁と同様,RC構造であり,高い固定度を有する一方,上部鉄骨柱と下部RC柱の接合はベースプレートによるシアキャップとアンカーボルトの緊結とし,鉄骨柱支点部での回転を許容する。この鉄骨柱支点部には,柱の作用せん断力にはシアプレートで抵抗し,圧縮力とせん断力はRC柱の頂部に設けたシアプレートで伝達させ,軸方向の引張力はアンカーボルトで伝達させる方法とする。鉄骨柱支点部の位置を高さ方向に調節することで,最下層の水平層剛性や柱の曲げ応力を制御できるため,従来の柱脚とは異なり,最下層のRC柱の脚部と鉄骨柱の柱頭の曲げ応力の比を制御できる。これまで,この柱脚機構を有する鉄骨ラーメン構造の耐震限界性能や最下層柱を弾性保持するための柱梁耐力比,鉄骨柱支点部高さ等を明らかにした。
本研究では,鉄骨柱支