共同研究・競争的資金等の研究課題

2018年4月 - 2022年3月

非アルキメデス的幾何のアラケロフ幾何への融合

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
18K03211
担当区分
研究代表者
配分額
(総額)
4,420,000円
(直接経費)
3,400,000円
(間接経費)
1,020,000円

アラケロフ幾何における基本的アイデアは,代数体上の対象に対し,そのアルキメデス的素点における複素解析空間上の対象に計量を入れて考えることにより「コンパクト化」する点にある.そして,必然的に,微分幾何的・函数解析的手法を使って算術幾何を展開することになる.アルキメデス的素点には複素解析空間が付随しているという視点を非アルキメデス的素点上に敷衍すると,そこにはベルコビッチ空間が付随している.これにより,アラケロフ幾何においてベルコビッチ空間の幾何を研究することは重要な位置を占める.そこで,本研究課題においては,このベルコビッチ空間の幾何的研究が重要となる.
ベルコビッチ空間の幾何的側面の研究を行うには,トロピカル幾何の研究が重要となる.トロピカル多様体とは,空間としては多面体的複体の構造をもった位相空間で,トロピカル化とはベルコビッチ空間の「無限に繁茂した」構造を有限の多面体的複体構造で近似するものと考えられているためでさる.
当該年度において,2018年度に引き続き,トーリック多様体のトロピカル化,すなわちトロピカルトーリック多様体とその因子の研究をさらに進展させた.さらに,一般のトロピカル多様体の因子の概念の導入とその基本性質の研究を進めた.
当該年度の研究においてとくに強調すべき点は,トロピカル多様体をその底空間のみに着目するのではなく,代数幾何的視点から「構造」に注目した点である.先行研究として,何等かの意味での「トロピカル多様体」に「構造層」を乗せたものは考えられてはいるが,それらは代数幾何的視点からは不十分な点もある.本研究で,より適切と思われる「構造層」を導入し,「トロピカル代数多様体」の再基礎づけを行っている.それによって,よりシステマティックにトロピカル幾何の理論を整備できることが期待される.

ID情報
  • 課題番号 : 18K03211