2018年4月 - 2021年3月
歴史文献を用いた過去の太陽活動の研究
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
本研究の目的は、歴史文献中に記述されている天体現象、特にオーロラと黒点の観測記録から、過去の太陽活動および宇宙天気現象の変遷を探ることである。 今年度の成果としては、まず18-19世紀の巨大磁気嵐の記録の調査を行い、観測史上最大と言われていたいわゆるキャリントンイベントに匹敵するイベントが相当の頻度で起きていることを複数例で実証したことが挙げられる。この成果はすでに2本の論文として出版されている。また、放射性同位体などの解析から、キャリントンフレア以上のいわゆるスーパーフレアが起きた可能性がある西暦775年前後のオーロラ記録に関する史料の吟味を進め、当該の放射性同位体イベントがスーパーフレアであったという確証を得るには至っていないものの、新たな知見を得て論文にまとめている。また、太陽活動が極端に低調であった17世紀から18世紀にかけてのいわゆるマウンダー極小期と呼ばれる時期に日本と中国でオーロラらしい同時観測があることが以前から知られていたが、本研究で同時期のヨーロッパにおける黒点記録との照合を行い、実際にその時期には大フレアを起こしうるような巨大黒点がなかったこと、またオーロラの観測緯度から地磁気嵐の強さがDst indexで-300nT以上となることを明らかにした。この現象の説明を与えるために、Dst Indexの経験的な時間発展モデルを用いて、同程度の地磁気嵐が、黒点のない静穏領域にあるフィラメント噴出を起源とするコロナ質量放出で説明できることを明らかにした。この成果は論文出版受理の状態である。加えて、研究協力者が所属する機関等と協力して、市民参加型で歴史文献から天体現象を含む過去の自然現象の記録を探すイベンを開催し、その報告と考察を論文として出版している。
- ID情報
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- 課題番号 : 18H01254
- 体系的課題番号 : JP18H01254
この研究課題の成果一覧
絞り込み
論文
8-
書物・出版と社会変容 25 1-35 2020年11月 筆頭著者
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ASTROPHYSICAL JOURNAL 887(1) 2019年12月 査読有り
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ASTRONOMY & ASTROPHYSICS 616 2018年9月 査読有り
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PUBLICATIONS OF THE ASTRONOMICAL SOCIETY OF JAPAN 69(2) 2017年4月 査読有り
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PUBLICATIONS OF THE ASTRONOMICAL SOCIETY OF JAPAN 69(2) 2017年4月 査読有り
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SOLAR PHYSICS 292(1) 2017年1月 査読有り
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PUBLICATIONS OF THE ASTRONOMICAL SOCIETY OF JAPAN 68(6) 2016年12月 査読有り
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EARTH PLANETS AND SPACE 68 2016年11月 査読有り
MISC
1-
天界 = The heavens 100(1124) 4-7 2019年1月