共同研究・競争的資金等の研究課題

2021年4月 - 2022年3月

AMED橋渡し研究戦略的推進プログラム(シーズA)

国立研究開発法人日本医療研究開発機構  

課題番号
A20-26
配分額
(総額)
1,000,000円
資金種別
競争的資金

本研究では、イソラムネチンを中心としたO-メチル化フラボノールが、心房細動によって生じる心房の電気的・構造的リモデリングに対して治療薬もしくは予防薬として作用する機能を明らかにし、特許出願することを目的とした。
O-メチル化フラボノールの合成:O-メチル化フラボノールとして、イソラムネチン、タマリキセチン、ラムネチン、アザレアチン、3-O-メチルケルセチンを既報に従って合成した。
動物心房細動モデルの確立:心房細動はマウスの頸静脈に電気カテーテルを挿入し、高速ペーシングを与えて誘発させた。実験は、コントール群、アンギオテンシンII投与群、アンギオテンシンII+O-メチル化フラボノール治療群にわけて行った。
HL-1細胞を用いたin vitro実験:動物実験と同様3群にわけ、アンギオテンシンII投与群、アンギオテンシンII+O-メチル化フラボノール治療群に、アンギオテンシンIIを負荷した。アンギオテンシンII+O-メチル化フラボノール治療群にはアンギオテンシンII負荷前にO-メチル化フラボノールで処理した。
結果: O-メチル化フラボノールとしてイソラムネチンを用いた場合、アンギオテンシンII群では、無処置群と比較して心房細動誘発率が有意に増加し、心房細動誘発時間が有意に延長したが、イソラムネチン治療によって、心房細動誘発率が有意に減少し、心房細動誘発時間が短縮した。また、アンギオテンシンII負荷による心房有効不応期の短縮が、イソラムネチンを投与することで回復した。単離心筋細胞を用いたCa2+イメージング実験では、アンギオテンシンII誘発性のリアノジン受容体からのCa2+の漏れの発生頻度が、イソラムネチンを投与することで緩和された。組織学的所見ではアンギオテンシンIIによる線維化領域の増加が、イソラムネチンを投与することで減少した。ウエスタンブロット実験では、Ca2+ハンドリング関連タンパク、ox-CaMKII、pRyR2の発現がアンギオテンシン群で増加したが、イソラムネチンで治療することで改善した。また、線維化、肥大を引き起こすMAPK関連分子(ERK、JNK)とその発現にかかわるTRPC3/6がアンギオテンシンIIの負荷で増加し、イソラムネチンで治療することで改善した。HL-1細胞を用いた活動電位測定実験では、リアノジン受容体から生じるCa2+の漏れによって引き起こされるとされている遅延後脱分極の発生頻度が、アンギオテンシンII群で増加し、イソラムネチンを投与することで緩和された。イソラムネチン以外のO-メチル化フラボノールでも同様の傾向がみられることを確認した。
結論:O-メチル化フラボノールは電気生理学的、構造学的異常を同時に改善することで心房細動の発症を予防する機能を示し、既存薬に対して優位性を持つことが示唆された。

ID情報
  • 課題番号 : A20-26