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星 サンゴ礁をつくる石灰藻サンゴモ類の新種発見

石灰藻サンゴモ類は,体の重量の約9割が炭酸カルシウムで構成される海藻(紅藻類)です。熱帯域においては,刺胞動物のサンゴと同様,サンゴ礁をつくる生物(造礁生物)として知られています。加藤と海洋生物環境研究所の馬場将輔博士の研究により,これまで太平洋西岸で「ミナミイシモ Lithophyllum kotschyanum」と同定されていたサンゴモ類(写真)は,この種ではなく,新種L. kuroshioenseを含む,少なくとも3種あることが明らかになりました。


(写真)沖縄県今帰仁村で撮影(2012年10月)
解説:
 「ミナミイシモ Lithophyllum kotschyanum」は,サンゴ礁の浅い海でごく一般的に見られる枝状の石灰藻で,紅海,インド洋〜太平洋の熱帯域に広く分布するとされていましたが,形態形質および遺伝子データに基づく研究により,太平洋西岸では,ミナミイシモではなく,L. kuroshioense(新種)とL. subtile,さらに世界の熱帯域に広く分布するL. kaiseriの少なくとも3種が分布していることが明らかになりました。
 サンゴモ類は,サンゴ礁のほか,より高緯度においても沿岸域に地形を作る生物である一方,地球温暖化に付随する海洋酸性化の影響を受けやすいことが報告されています。今回,明らかになった種を肉眼で区別することは難しいですが,近年,こうした種の違いが,生育場所での局所的な分布と関連していることが明らかになってきました。今後の分類学的研究および気候変動の影響に関する研究の進展が期待されます。

論文情報:
Kato, A. & Baba, M. 2019. Distribution of Lithophyllum kuroshioense sp. nov., Lithophyllum subtile and L. kaiseri (Corallinales, Rhodophyta), but not L. kotschyanum, in the northwestern Pacific Ocean. Phycologia 58 (6): 648-660.