近年，高血圧症に起因する心臓・脳血管疾患の発症率が上昇しており，日常的な血圧モニタリングはその早期発見や予防において重要である。日常的な血圧モニタリングの実現には，被計測者がストレスを感じず無意識的にかつ可及的速やかに血圧を計測できることが望ましく，カフを用いない低拘束な計測方法（カフレス血圧計測手法）が求められている。我々は，遠隔で計測可能な心臓血管系指標である顔面熱画像（顔面皮膚温）に基づく遠隔的な急性血圧変動推定を試みてきた。顔面皮膚温は顔面の血流などで変動するが，必ずしも血流が変動してすぐに皮膚温が変動するとは限らず，むしろ血流と皮膚温変動に時間差があることが予想できる。血流と皮膚温変動の時間差を考慮することで，血圧推定精度が向上することが期待できる。本論文では，血流と皮膚温変動の時間差を考慮した顔面皮膚温に基づく遠隔血圧推定を試みた。