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2018年4月

【Antibody Update 2018】 橋本脳症と自己抗体

BRAIN and NERVE: 神経研究の進歩
  • 米田 誠

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4
開始ページ
0305
終了ページ
0314
記述言語
日本語
掲載種別
出版者・発行元
(株)医学書院

<文献概要>橋本脳症は,慢性甲状腺炎(橋本病)に伴う自己免疫を基盤とした精神・神経疾患である。ステロイドを主体とした免疫療法が奏効するが,臨床症候が多彩なため診断は容易でなかった。筆者らは,橋本脳症に特異的な血清の診断マーカーとして,αエノラーゼのN末端領域に対する自己抗体(抗NAE抗体)を開発し,橋本脳症の臨床スペクトラムを明らかにした。橋本脳症患者の約半数がこの抗体を有する。発症年齢は広く,若年層と高齢者に二峰性に分布する。神経症候として最もよくみられるものは意識障害であり,幻覚・せん妄などの精神症状,認知症,不随意運動,てんかん,小脳性運動失調症(小脳失調)がよくみられる。脳波での基礎波の徐波化や脳SPECTでの血流低下が高頻度にみられる反面,頭部MRIの異常は,辺縁系病変と深部白質病変以外は稀である。認知症をきたすものとしては,辺縁系脳炎,白質脳症,クロイツフェルト・ヤコプ病mimicなどがある。脊髄小脳変性症においては,小脳失調型橋本脳症が鑑別診断に挙がる。日常診療の中で,治療可能な橋本脳症を常に念頭に置くことが必要である。

ID情報
  • ISSN : 1881-6096
  • 医中誌Web ID : S419270008

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