2021年12月20日
化学概念の理解の深化を促すマクロとミクロをつなぐ大学の化学実験教材の研究(Ⅰ):溶解熱測定によるイオンの水和構造の理解
文教大学教育学部紀要
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- 巻
- 55
- 号
- 開始ページ
- 233
- 終了ページ
- 243
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 研究論文(大学,研究機関等紀要)
- 出版者・発行元
- 文教大学
本研究は,学生の化学の基本概念の深い理解(深化)を促す「化学の原理の知識化に必要な要因」を踏まえた化学実験教材を作成することを目的として行った.化学変化の一つである「溶解」をテーマに,マクロなエネルギーである「溶解熱」を,熱力学の第一法則を介してエネルギー値を軸とし,ミクロな水和に関わるパラメータである「溶解エンタルピーΔH_soln」「水和エンタルピーΔH_aq」「水和数」と結びつけることを試みた.金属イオン結晶の溶解熱測定の結果から算出したΔH_solnを用いて,陽イオン半径r⁺とΔH_soln,r⁺とΔH_aqの間の正の相関,r⁺と水和数の間の負の相関を見出し,イオン−双極子相互作用が強くなると水和しやすいことを示した.また,第5,6周期の陽イオン,つまり最外殻が4p,5p軌道であるイオンの水和は,r⁺や電荷だけでは説明できず,水分子の軌道と陽イオンの最外殻軌道の軌道間相互作用の影響を考慮する必要があることが示唆された.
- ID情報
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- ISSN : 0388-2144