基本情報

所属
三重大学 人文学部 文化学科 教授
学位
博士(学術)(広島大学)
教育学修士(広島大学)

J-GLOBAL ID
200901040641291854
researchmap会員ID
1000188223

外部リンク

フランクフルト・アム・マインのボッケンハイマー通りは、春になると街路樹のマロニエが白い花を咲かせる。この通りに沿って旧オペラ座から歩いて数分の距離に老舗のカフェ・ラウマーがある。元々あった場所から移転されたものの、テオドール・アドルノをはじめ、フランクフルト社会科学研究所の学究が集った場所とされる。カフェとクーへンの濃厚な味わいから、この地につちかわれてきた芸術と学問の歴史を感じることができる。フランクフルト大学の敷地内には、ユダヤ人迫害から逃れ、ファシズムを批判する論考を遺した哲学者の偉業を顕彰するアドルノ広場がある。そこには現代ドイツの趣向を凝らした記念碑-木製の椅子と書斎机。机のうえにはスタンドライトとメトロノーム、原稿用紙が置かれ、今さっきまで哲学者がそこで執筆をしていたかのような存在感を与える。
フランクフルトの目抜き通りであるツァイルを東に歩いた先には、フランクフルト地方検事局がある。その2階には、白と黒の幾何学模様の壁紙が印象的なバウアー・ザールがある。その部屋を執務室として使っていたのは、戦後ドイツ国内ではじめてアウシュヴィッツに関する裁判(1963-65)を主任検事として指揮したフリッツ・バウアーであった。
2016年には、「ほんの氷山の一角」というタイトルの付いた、重さ4・5トンのモニュメントがフランクフルト上級地方裁判所に設置された(ツァイル42番地)。ブロンズのプレート2枚には、「あなたは知らなければなりません。氷山のあることを。そしてわたし達は小さな部分だけを見て、大きな部分は見ていないことを」と記されている。これは1964年の討論集会でバウアーが語った言葉で、当時テレビ放映されて、大きな反響を呼んだ。
このプレートには「アウシュヴィッツ強制収容所に関与していたドイツ人8000名の内、訴追できたのは40名」とも記されている。ドイツ司法がこれまで明らかにできたのは、ナチスによる組織的な暴力の一部にとどまっている。ショアーという戦争犯罪に対してドイツ社会が正視するきっかけをもたらした、バウアーの功績は測り知れない。
支配と抑圧の社会構造を解き明かすことは難しい。なぜなら支配された者は他の者を支配しているし、抑圧する者は他の者に抑圧されているからである。しかし、その構造を無批判に容認することはできない。目下私は、これら矛盾の核心を語ろうとする文学作品を対象として研究を進めている。

委員歴

  8

論文

  96

MISC

  175

書籍等出版物

  51

講演・口頭発表等

  99

共同研究・競争的資金等の研究課題

  12

メディア報道

  4