論文

査読有り
2019年10月

【健康先進国に求められる文化に即した保健医療-災害保健活動に焦点を当てて-】減災ケアの共創と可視化 西日本豪雨の事例とともに

保健医療科学
  • 神原 咲子
  • ,
  • 山岸 暁美
  • ,
  • 小澤 若菜

68
4
開始ページ
319
終了ページ
328
記述言語
日本語
掲載種別
研究論文(学術雑誌)
出版者・発行元
国立保健医療科学院

世界中で「水害が起こるかもしれない確率」が増加する中で、短期・中期・長期的なリスクが発生し、経済・社会・健康・文化・環境への大きな影響をもたらしている。日本においても、2018年、西日本を中心に激しい豪雨に見舞われ、中四国の多地域で、同時に甚大な被害を受けた。本稿では、多様な社会背景の多様な災害に対応する看護について、災害と看護、特にケアの観点から開発した「減災ケア」の研究・実践の枠組みを提示する。そして、その実践に重要と考えられた、文化的配慮に基づく実践、その情報共有のあり方、新たな解決方法の必要性について西日本豪雨の事例とともに考察する。疫学的な思考で、災害を捉えるにあたり、時間軸は、災害過程をつらぬく唯一の普遍的な基軸である。また、災害直後の地図の利活用は、組織間の情報共有は大幅に改善し、救助および復旧作業を容易にさせることは言うまでもない。一方で、災害時の避難生活において健康や生活に関する実態を把握する場合、災害サイクルとともに、地域にあった課題が様々に顕在化し支援ニーズも現れる。把握する仕組みがなければ、本来の需要の可視化、客観的説明、的確なケアと供給バランスを整えることは非常に難しい。普遍的な情報に合わせて、多様な質的情報から重要な事項を抽出することが望ましい。西日本豪雨災害では、ボトムアップアプローチとして、人々が必要な情報を特定し、地図化を試みた。緊急時に、雑多な情報から即座に利活用できる知識・技術を備えるためには、合意形成や具体的な方法が重要である。一方、発災直後からプライマリヘルスケアによる役割を果たしていたのは、地域の共助や家庭の中にある制度に基づかない多様な人々からのケアであった。この多様な人々からのケアは、平常時からの健康リスクの削減、災害発生直後の状況把握、救援活動時の迅速・適切な配置、適切な復興などの場面において、最も継続的にかつ状況を即座に改善し、安心安全な生活の保障に寄与している。しかし、このようなケアを担う人々も、多様で継続的な健康の危機によって、自身の健康・生命自体が脅やかされ、更なる脆弱性を招くことも考えられる。外部から支援を行う際は、地域もハザードも違う。よって、災害の不確実な予後の地域文化を支援するために、価値観、信念、基準、慣例など内部的な文化の見解を理解していく姿勢が必要である。(著者抄録)

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ID情報
  • ISSN : 1347-6459
  • eISSN : 2432-0722
  • 医中誌Web ID : 2020117017

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