PHITSにおける有機シンチレータの中性子応答解析機能の整備
日本原子力学会2021年秋の大会
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- 開催年月日
- 2021年9月
- 記述言語
- 日本語
- 会議種別
- 開催地
- 札幌(online)
- 国・地域
- 日本
有機シンチレータを用いた中性子測定において、シンチレータの応答関数や検出効率を評価することは、中性子の絶対収量を決定する上で重要となる。原子力機構では、この評価に利用する計算コードSCINFUL-QMDを開発しており、無償公開されたコードは国内外において広く利用されてきた。しかし、SCINFUL-QMDは、計算対象として真空中に配置した円筒形のシンチレータしか取り扱えず、検出器架台や周辺器具からの寄与を含めた評価はできない。そこで本研究では、機構が開発する汎用放射線輸送計算コードPHITSに、SCINFUL-QMDで開発した機能を実装し、実際の実験環境に合った応答関数および検出効率の評価ができるようにPHITSを拡張した。まず、中性子と炭素原子核との核反応計算のため、SCINFUL-QMDで使われた多体崩壊理論に基づく模型をPHITSに組み込んだ。また、核反応模型使用時の水素および炭素原子核の中性子断面積として、精度の不十分であった既存のデータや系統式から、評価済み核データライブラリJENDL/HE-2007の断面積データを利用可能にした。さらに、生成荷電粒子の運動エネルギーからシンチレータの光出力を算出する機能を追加し、応答関数および検出効率を評価するためのユーザー定義タリーを整備した。この結果、PHITSは中性子と炭素原子核との核反応をより精度よく模擬できるようになり、応答関数および検出効率の実験データを適切に再現した。本研究の成果により、有機シンチレータの応答解析においても、PHITSの利用が拡大することが期待される。