2020年7月 - 2023年3月
酵素活性を指標とする鳥インフルエンザのヒト伝播危険性の迅速簡易測定法の開発
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽) 挑戦的研究(萌芽)
2013年以降、中国でH7N9型鳥インフルエンザウイルスの人への感染例が多く報告された。人へ伝播した鳥インフルエンザウイルスが人から人へ感染拡大し、新型インフルエンザとして世界規模の大流行(パンデミック)を起こす恐れがある。人に感染したH7N9型鳥インフルエンザウイルスの表面に存在する二つの主要糖タンパク質はヘマグルチニンとノイラミニダーゼ(NA)である。その中でNAの性状についてはよく分かっていない。NAは、ウイルス受容体のシアル酸を基質として糖鎖末端から切断するシアリダーゼ活性を示す。本研究は、N9型NAのシアリダーゼ活性の性状が人ウイルスあるいは鳥ウイルスのどちらに近いのかを調査する。人ウイルスに近い酵素性状を見つけることで、人への伝播機構の一端の解明をめざす。また、その性状は人への伝播リスクの指標にも利用できることが期待される。
NAの酵素性状の一つに、糖鎖末端シアル酸の主要分子種N-acetylneuraminic acid(Neu5Ac)およびN-glycolylneuraminic acid(Neu5Gc)に対する基質特異性において、2013年のH7N9型NAは通常の人ウイルスよりも通常の鳥ウイルスに類似していた。そこで、人ウイルスと鳥ウイルスの間で異なるNAの酵素性状として酸性安定性を候補に挙げ、その性状を調査した。2013年の2株のN9型NAのうち、一つのNAの酸性安定性は高く、通常の鳥ウイルスと類似していた。もう一方のNAの活性は酸性条件で見られたが、中性条件では著しく低下していた。これは人ウイルスおよび鳥ウイルスの両者のNAには見られない性状である。この酵素性状の差を生じさせるアミノ酸の1置換を同定した。また、通常の人ウイルスの低い酸性安定性と同様な酵素性状を生じさせる、N9型NAのアミノ酸の3置換を同定した。
NAの酵素性状の一つに、糖鎖末端シアル酸の主要分子種N-acetylneuraminic acid(Neu5Ac)およびN-glycolylneuraminic acid(Neu5Gc)に対する基質特異性において、2013年のH7N9型NAは通常の人ウイルスよりも通常の鳥ウイルスに類似していた。そこで、人ウイルスと鳥ウイルスの間で異なるNAの酵素性状として酸性安定性を候補に挙げ、その性状を調査した。2013年の2株のN9型NAのうち、一つのNAの酸性安定性は高く、通常の鳥ウイルスと類似していた。もう一方のNAの活性は酸性条件で見られたが、中性条件では著しく低下していた。これは人ウイルスおよび鳥ウイルスの両者のNAには見られない性状である。この酵素性状の差を生じさせるアミノ酸の1置換を同定した。また、通常の人ウイルスの低い酸性安定性と同様な酵素性状を生じさせる、N9型NAのアミノ酸の3置換を同定した。
- ID情報
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- 課題番号 : 20K21721
- 体系的課題番号 : JP20K21721