講演・口頭発表等

2015年

UAVとSfM多視点写真測量を用いた高精細データの取得と地形解析への応用:- 阿蘇山周辺の表層崩壊を対象として -

日本地理学会発表要旨集
  • 齋藤 仁
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  • 内山 庄一郎
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  • 小花和 宏之
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  • 早川 裕弌
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  • 泉 岳樹
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  • 山本 遼介
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  • 松山 洋

&nbsp;1.はじめに<br><br>阿蘇山中央火口丘や外輪山の草地は,豪雨による集団発生的な表層崩壊が頻繁に起こり(例えば,2012年7月,2001年6月,1990年7月など),地形変化の速い地域である.表層崩壊発生場所の特徴や,その後の地形変化を明らかにすることは,今後の土砂災害対策や,阿蘇を特徴づける草地景観の保全の観点から重要である.しかしながら,表層崩壊は深さ1 m程度であり,一般的な衛星画像や空中写真では,その空間分解能,撮影頻度およびコストの面で,表層崩壊地やその周辺での時空間的スケールの小さな変化を捉えることは容易でない.一方で近年,小型UAV(無人航空機)やStructure<br>from Motion(SfM)多視点写真測量の技術により,比較的簡易かつ安価に,高精細のオルソ画像や,ポイントクラウド,DSMの取得が可能となった.<br><br>そこで本研究では,これらの技術を用いて,阿蘇山周辺の表層崩壊地で高精細な地形データ・オルソ画像を取得した.また,異なる時期のデータを用いて表層崩壊地の地形的特徴と地形変化に関する解析をおこなった.<br><br>2.対象地域と手法<br><br>対象としたのは,2012年7月に多数の表層崩壊が発生した,阿蘇外輪山の妻子ヶ鼻周辺の小流域(0.06 km2,図1)と,仙酔峡(1.2 km2)である.2012年8~9月,2014年8~12月に現地調査,およびUAV,GNSSによる測量をおこなった.取得した低空空撮画像からSfM多視点写真測量を用いて,オルソ画像,ポイントクラウド,DSMを取得した.また表層崩壊発生前の地形情報として,航空LiDAR(空間解像度2 m,2004年4月取得)を用いた.<br><br>3.結果と考察<br><br>空間解像度4.0 cmのオルソ画像と10.0 cmのDSM(妻子ヶ鼻),および空間解像度5.0 cmのオルソ画像と10.0 cmのDSM(仙酔峡)が得られた.妻子ヶ鼻の小流域内では表層崩壊が26箇所(19.9 ~<br>4,593.9 m2)発生し,全崩壊面積は流域内の約30 %に達した.2004年(斜面崩壊発生前)と2014年の地形を比較したところ(図1),斜面崩壊は平均傾斜約40&deg;の斜面で多数発生していた.また斜面崩壊の平均深は0.5~1.0 m程度であり,流域内での推定される土砂生産量は0.9~1.7&times;104 m3であった. <br><br>仙酔峡では,約300箇所で表層崩壊(8.4 ~10,532.4 m2)が発生した.推定される土砂生産量は,1.1~1.5 &times;105 m3/km2であり,2001年の災害時(宮縁ほか,2004,地形)と比較すると,一桁大きいことが示された。また表層崩壊の発生密度の分布には違いがみられ,地形条件が影響した可能性が示唆された.<br><br>今後も継続的にUAVによる画像を取得し,多時期のデータを用いて地形変化と植生変化を定量化することが課題である.

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URL
http://ci.nii.ac.jp/naid/130005489936