共同研究・競争的資金等の研究課題

2016年4月 - 2021年3月

IRMSによる微小領域安定同位体比分析:境界領域への深化と絶対変動解析への展開

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(B)  基盤研究(B)

課題番号
16H02944
担当区分
研究分担者
配分額
(総額)
17,810,000円
(直接経費)
13,700,000円
(間接経費)
4,110,000円

これまでに世界最高水準の安定同位体比分析計(IRMS)を用いた炭酸塩の超高解像度環境解析の研究基盤(MICAL3c)を確立し,複数の共同研究を伴う積極的な応用研究を開始してきた.本研究課題は,(1)これまでの相対変動解析を主体とした生物源炭酸塩の安定同位体比による環境変動解析から,海洋そのものの同位体値復元に基づく絶対変動解析への変革を推進すること,そのために(2)境界領域・複合分野へ分析技術の適用範囲を広げ,特に水産学分野への展開を加速し,(3)世界唯一の分析技術に対する国内外の幅広い需要に応えるために確固 たる研究基盤を維持発展させることを本研究の目的としている.
本年度の代表的な成果は,まず,魚類耳石の同一群の同位体プロファイルを個体ごとに明らかにすることによって,群れの形成時期や回遊経路のバリエーションを見出すことに成功した.このことは,同位体値の個体分散指標が生態情報の抽出につながることを示すものでもある.また,有孔虫の個体別分析技術を用いて参画した共同研究では,遺伝子抽出・MicroX線CTで形態計測した個体からの安定同位体比情報の抽出方法を確立し論文として公表するに至った.
分析技術の高度化に関しては,昨年度導入したキャビティリングダウン分光方式安定同位体比分析装置(CRDS)の高度化と高精度化を推進し,日本周辺海域における海水同位体比のマッピングを推進した.結果,年間の実分析数は1500サンプル以上と量産体制を確立し,さらに分析手法の高度化により安定性に難があるとされてきた海水の分析で,dDで±0.2‰以下,d18Oで±0.03‰以下と高精度での長期安定分析を実現した.結果的に一元管理のもとでの炭酸塩総合分析体制を構築し応用研究への基盤強化につながった.海水の分析結果は,日本海における古環境解析や魚類回遊経路解析の基礎データとして活用へとつながる.

ID情報
  • 課題番号 : 16H02944