共同研究・競争的資金等の研究課題

2016年4月 - 2019年3月

温帯林の種多様性創出における病原菌と菌根菌の相対的重要性

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(B)  基盤研究(B)

課題番号
16H04931
配分額
(総額)
16,770,000円
(直接経費)
12,900,000円
(間接経費)
3,870,000円

1. 病原菌と菌根菌の効果が及ぶ範囲の推定
イタヤカエデとコナラが優占する林分が直線的に隣接する場所を選定し、両林分の境界線から距離別にイタヤカエとコナラ2種を両林分に播種した。この実験は、ギャップと林内で行った。コナラは外生菌根菌とイタヤカエデはアーバスキュラー菌根菌に感染していた。ギャップでは2種ともに同種の親木に近いほど菌根菌の感染率や感染実生の成長量が高くなった。逆に、親木(境界)から離れるに従って、感染率や菌根菌の成長促進効果が減少した。 林内ではコナラはすべてネズミに食害されデータは得られなかったが、イタヤカエデはギャップとは逆の傾向を示し、同種成木に近いほど病原菌による死亡率も増加した。この結果は、光環境によってPlant-soil feedback (PSF)の方向性が異なるといった仮説を裏ずけるものである。
<BR>
2. 老熟林試験地(6ha)の動態調査による空間分布パターンの解析
老熟した天然林に設定した大面積試験地(6ha)でブナ・ミズナラ・トチノキ・クリ・ミズキ・ウワミズザクラの6種の当年生から成木まですべての個体の位置とサイズを2003年に測定した。2015年(H27年)には13年後の再測を行った。それぞれの種において、成木と実生の空間分布パターンL関数で解析した。相対優占度の高いブナ、トチ、クリでは成木の近くに実生が多く同所的に分布し、一方、優占度の低いミズキ・ウワミズザクラでは排他的に分布した。外生菌根菌タイプは正のPSFをアーバスキュラー菌根菌タイプは負のPSFを示し、それが個体群の空間分布パターンに大きく作用することを明らかにした。

ID情報
  • 課題番号 : 16H04931