共同研究・競争的資金等の研究課題

2020年11月 - 2025年3月

ミクログリアデコーディングによる全身監視・制御システムの解明

日本学術振興会  科学研究費助成事業 学術変革領域研究(A)  学術変革領域研究(A)

課題番号
20H05902
体系的課題番号
JP20H05902
配分額
(総額)
102,310,000円
(直接経費)
78,700,000円
(間接経費)
23,610,000円

ミクログリアは、単に免疫細胞としてでなく、シナプスの伝達様式や形態制御など脳の中核機能の制御に非常に重要な役割を果たしている。しかしこれまでの殆どの研究は、マウス等のげっ歯類ミクログリアを用いた研究であった。ヒトとげっ歯類グリア細胞の性質が大きく異なる事、またin vitroと実際の脳内in vivoでのグリアの性質が違うこと等を鑑みると、これまでのミクログリア研究で得られたことから本当のヒトミクログリアの性質を外挿することは困難であると言える。
本年は先ず、ヒトiPS細胞からミクログリアを分化させ(iPSMG)、このiPSMGを非侵襲的にマウス脳内に移植する技術開発を行った。移植には、colony stimulating factor-1受容体(CSF1R拮抗薬)拮抗薬による既存ミクログリアの薬理学的除去と、経鼻移植法を組み合わせることにより行った。従来の外科手術による移植と異なり、経鼻移植の開発により、簡便、安定的かつ安全な移植が可能となった。また脳は、免疫寛容であること、唯一の免疫細胞ミクログリアをCSF1R拮抗薬で除去すること、移植が完全非侵襲的であるために末梢の免疫細胞の浸潤が無い事の理由により、ヒト細胞であるiPSMGをマウスに移植したにもかかわらず、iPSMGはマウス脳内で少なくとも2ヶ月は存在した。これにより、免疫抑制剤や免疫不全動物が不要となり、真のヒトミクログリアの性質解析が可能となった。
今後は、移植されたiPSMGの性質を詳細に解析することで、ヒトミクログリアが脳内で果たす生理的及び病態生理的役割の解明に繋げていく予定である。さらに、ミクログリアを非侵襲的に置換することが可能となった(移植及び自己再生による置換)。ミクログリア置換法を用いることで、積極的にミクログリアに介入することで、ミクログリアが脳機能に果たす役割解明が大きく進むことが期待できる。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PLANNED-20H05902
ID情報
  • 課題番号 : 20H05902
  • 体系的課題番号 : JP20H05902