研究ブログ

2012年12月の記事一覧

講義はエンターテイメント!?:イントロ

山地先生から講義の電子ブック化に協力してほしいと頼まれました。
先生とは、もともと機関リポジトリや学術情報流通の分野で共同で研究していて、年に数回会います。
その時に、ここに書いた中学生向けのイベントや大学での講義での工夫を話していて、
面白いコンテンツができるかもと思ったみたいです。

最初は、断わろうかと思いました。
というのも、面白い講義を目指して工夫をしてきたものの、
それは私が担当している講義が学部(物理学科情報理学コース)も大学院も
受講者がもともと少なく、そのためインタラクティブにできるからと考えていました。
そのため、インタラクティブにできないe-Learningでは、
いままでやってきた工夫は使えないと思ってからです。

しかし、知り会いの先生に頼まれて、今年度の前期に1コマ(90分)だけ
約160人(!!)のB1, B2(文系から理系まで!!)を対象に講義をしたことがあり、
この時、インタラクティブなやりとりを実現するために
掲示板を使ってみたところ、学生に非常に好評でした。
この時、分かったのは、個々の学生から教員の間のコミュニケーションが
可能なだけでなく、講義内で学生の間でのコミュニケーションも成立しました。
これには驚きました。

つまり、インタラクティブな講義が好まれるというのはよく知られているけど、
教員と学生の間の1対1の関係において対話的であるよりも、
学生間の対話であったり、あるいは教員と(ある)学生との間の
やりとりを他の学生とも共有できることも重要だということです。
また、少人数だから対話的にしやすく、面白い講義にしやすいと思っていましたが、
必ずしもそうでもないわけです。
掲示板というツールを導入するだけで、かなり面白い講義になりました。

だとしたら、電子ブックやe-Learningでは不可能と考えられていたことが
工夫しだいで可能になるかもしれません。
また、遠隔で、かつ、同時に受講しないという制約があるおかげで
本質的に重要なこと、つまり、「そもそも教育とは何?」ということを
考えやすくもなります。
さらに、大学院の授業でブレストの練習をした時に、
どういう授業が楽しいかを学生さんにディスカッションしてもらう機会があって、
学生さんからの意見にも触れる機会がありました。
こういうのを踏まえて、頼まれたコンテンツ作りの打ち合せを前に、
教育とは何かを考えたいと思って、ブログにまとめてみます。
書いてたら意外に長くなったので、何回かに分けていきます。

最初は、タイトルのエンターテイメントの説明です。
詳しくは次のエントリで述べますが、
自分の講義スタイルに大きく影響を与えたのが、
ある講義終了後のアンケートに「感動しました」と書いた子がいたことです。
本人は、もしかしたら軽い気持ちの「感動」だったかもしれませんが、
いままで面白かった、ためになったというのは多かったのに、
「感動した」というのは初めてでした。
翌年も同様の感想を書いてくれた子がいて、
「授業で感動させられる」という事実に自分が感動しました。

講義を大学を卒業したという資格(certification)の一部と考えてしまうと、
感動させる必要はありません。
また、学生からすれば、例えば、「九州大学」というラベルが欲しいために
受講しているのであり、「私の講義」を受けたいと思っているわけではないでしょう。
このような資格を目的とすれば、講義自体を楽に通過するか、効率の問題になり、
受ける側も教える側も面白くなくなるように思います。
それで、上のように感動させされるという事実を前に、
資格とは無関係にコンテンツとして感動させられることを目指したい、
と思うようになりました。
極端に言えば、資格などとは無関係に、講義をコンテンツとして考え、
このコンテンツを楽しみたいと思わせられるような講義をしたい、ということです。
それで、タイトルの「エンターテイメント」につながります。
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