Researchlog by Noriko Arai

2009年5月の記事一覧

ナイスステップな研究者 シンポジウム

昨年12月、国立科学政策研究所から「理解増進・成果普及」部門においてナイスステップな研究者に選定していただきました。そのシンポジウムが本日、文部科学省で開催され、私も参加してきました。
みなさん、本当にすばらしい研究成果で、ただただ感動して聞くばかり。特に、トランジスタモデルの世界標準化のものすごいバトルを勝ち抜いた広島大学の三 浦道子先生には、同じ女性研究者の端くれとして本当に感銘を受けました。トランジスタモデルの標準化の世界は「winner takes all」の弱肉強食の世界だそうです。投票で決まるのだそうですが、プレゼン中、自分のよさをアピールするだけではだめで、相手の弱点を徹底的に叩かなけ れば勝ち抜けないそうです。三浦先生は2006年にPenn Stateのチームと最後一騎打ちになったとき、14:17で惜敗されたそうですが、2008年にリベンジされ、42:2で圧勝し、高耐圧トランジスタの 部門の標準化モデルを勝ち取ったそうです。小柄な三浦先生が世界でその戦いをされたことを思うと、なんだか目頭が熱くなりました。
とりの講演は、「21世紀の錬金術師」といわれ、世界的に注目されている材料化学の東工大の細野秀雄先生でした。あ、そうでした。今日の10時からNHKに登場されるのでした。詳しくはそちらで。
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「ハッピーになれる算数」9刷り決定

お蔭様で、2005年に出版した「ハッピーになれる算数」(理論社)が9刷を迎えました。こちらは累計3万9千部だそうです。ご愛読いただき、感謝しています。

・・・しかし、9刷目になって、まだ校正ミスがみつかりまして。面目ないです。
p127、2段落目、上から4行目の
「白い長方形の横の長さは6cm」
は、正しくは
「黒い長方形の横の長さは6cm」
です。たいへん申し訳ありません絵文字:よろしくお願いします

小中学生が読むものは、校正ミスをすると読者がたいへん混乱するので、気をつけなければいけないと思ってはいるのですが、どうしたらこのおっちょこちょいな性格は直るのでしょうか。
校正ミスの防止方法をご存知の方がいらっしゃったら、ぜひご指南ください。

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最近気に入っているマイルームの使い方

Researchmapで「マイルーム」を活用している人は全体の1割未満だと思いますが。
私は結構利用しています。
最近気に入っている使い方は、マイルームに「汎用データベース」を置いて、ネタ帳を管理することです。
ネタ帳というのは、論文や書籍を書くときに引用する論文や記事のことです。最近年齢のせいか「こんな話を以前読んだから、そのことについて触れたい」と思っても、どの論文だっかたさっぱり思い出せないことがしばしば。また、正確なデータを思い出せず、結局引用をあきらめることも。

そこで作ったのがネタ帳です。
ネタとなる論文や記事はCiNiiやGoogle ScholarからPDF等でひっぱってきますが、それだけでは、検索もできないし、開いてみないとわからないので、使い勝手が悪い。そこで、マイルームに汎用DBを置いて、各論文を「カテゴリー」で分類し、検索キーワードをできる限りつけて、abstractをコピーできればそれを概要に書き、コメントをつけて、本体とともに保存してます。
概要も検索できるように設定しておけばより便利。(本当は全文検索できればもっと便利)
まぁ、ZoteroやScienceDirectでも似たことができるでしょ、っていえばそうなんですが。ニュースやブログやメールの中身などなんでもかんでも分類してネタ帳に入れておける、というところが個人的には使いやすいのかもしれないです。

あぁ、そういえば超超整理法の野口先生も同じようなことを言っていたような・・・
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! 新型インフルエンザの情報共有

新型インフルエンザの日本における人・人感染が神戸市で確認されました。それに伴い、神戸大学では全学で休講措置が取られました。たぶん、これは他の大学等にも拡大するかと思われます。そこで、各大学・研究機関における対応状況等を共有するために、コミュを作成しました。
「新型インフルエンザ対応状況」
冷静な対応のためにも、正確な情報・状況を把握された方はぜひ情報の登録をお願いします。

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Researchmapで本を書く!

Researchmapのコミュニティに「測るとは何か」という妙なタイトルのコミュニティを作りました。
これは、上野先生と私で進めている共著の本を書くためだけのコミュニティです。

最初、メールでやりとりしながら一緒に本を書いていたのですが、途中でバージョン管理がぐちゃぐちゃになってしまい、片方がある章を削除している間に、もう片方がその章の校正をしていたり、という非効率なことになってしまいました。

そこで、コミュニティにキャビネットとメール連動の掲示板だけを設置して、「参加者修正」でどちらもコミュニティの管理者(主担)に設定。どちらもキャビネットにフォルダを作りファイルを設置し、ToDoを書き、進捗状況を管理できるようにしました。

キャビネットにファイルを置くと、タイムスタンプがつく上、コメントもつけられるので「編集中!触るべからず」など短く書き込むこともでいます。
同じファイル名でアップすると上書きされずにバージョン管理ができるのも便利。どれが一番新しいファイルかすぐにわかり、また、古いバージョンと見比べるのもらくらくです。

これは本を書くだけでなく、離れているところの方と共著で論文を書くのにも便利ではないかと思います。「コミュニティ」というタイトルからくるイメージにとらわれずに、

研究者が楽になるためにResearchmapの機能を好き勝手に使い倒す

くらいのわがままさ加減で使うのがいいんじゃないかなぁ、と思いました。

ちなみに、このコミュニティは役割を終えたらキャビネットをまるごと圧縮してダウンロードして、削除するつもり。
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進路指導にResearchmap

昨日は埼玉県での共同研究の開所式のあと、懇親会に出席しました。
その際、埼玉県の指導主事の方に
「Researchmapすでに活用しています」
といわれて、びっくり。
「講演をお願いするのに、とても便利です」とのことでした。なるほど。

「それに、進路指導の上でも、非常に助かります」とのこと。
先日、高校生のうちの娘が、Researchmapの研究者検索で分野検索をして、「心理学」の先生方の研究内容を閲覧しながら、大学で何を学ぶか、についてのイメージをつかもうとしていたことを思い出し、その話をすると、
「そう!まさにそこなんですよ。高校の進路指導でも2年生で文理を決めるときに、大学の学部イメージが生徒にないのが一番のネックだったんです。ただ、受験関連のサイトでは、学部紹介の抽象的な情報が主で、なかなか『具体的に何をするのか』が見えてこないんですよね。
その点、Researchmapはまさに研究の中身というか匂いがわかるので、イメージしやすいんですよ。県内の進路指導の先生方に紹介したいと思っています」
とおっしゃってました。

でも、進路指導に本格的に使っていただくには、まだまだ分野のバラつきが大きすぎますよね。まずは人数の多い「工学部」や「経済・商学部」に入っていただきたいですねー。
工学部、経済・商学部のみなさま、ご参加をお待ちしています♪
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埼玉県教育委員会にて講演

今年度は埼玉県教育委員会と2つの共同研究を始めます。
一つ目は、初等中等教育における実践型情報モラル教育の研究です。もうひとつは、論理的表現力向上のためのトレーニング方法の開発です。

情報モラルの教育は、これまで冊子の配布やビデオの視聴などによる座学が中心でした。体験型と銘打ったものでも、情報モラルについて体験できるゲーム等のソフトを使っての学習が多く、生徒がリアリティをもたせることが難しいのが課題でした。学習直後には、著作権・個人情報などについての認識はそれなりに高まるのですが、知識と行動に乖離が見られたるのです。たとえば、著作権とはなにかという設問には正しく答えられるのに、Web上の他者の文章をそのままコピーすることに抵抗がなかったりする、というのはその典型的な例です。

そこで、生徒にリアリティをもって情報を発信するときの責任やその方法について実践的に学ばせる方法として、竹島小学校の「竹の子記者制度」に着目しました。竹島小学校では私たちの研究室で開発したNetCommonsというCMSを学校HPに活用しているのですが、その中の「汎用データベース」というモジュールを使って、子どもたち自身に学校に関する記事を外部に向けて配信させています。もちろん、何のチェックもなく記事を配信するのは危険ですが、NetCommonsの「記事承認機能」を活用して、生徒が書いた文章を担当の先生がチェックして、内容に問題がない場合だけ外部に公開しています。文章がわかりにくい・何らかの権利を侵害している、など問題がある場合にはそのつど添削指導をし、問題を解決してから外部公開しています。
これは、単なる作文指導のように見えますが、実は、
  • 状況を共有していない他者に伝わる論理的な文章を書く
  • 情報モラル等のルールを守って情報を発信する
  • Web拍手やコメントの数などの外部評価を通じて、情報発信力を高める
など、通常の作文指導を超えた効果があると考えられます。千葉県のO小学校での実践例でも、単位先生に提出するだけの作文と、他の生徒の目にさらされ、コメント等の評価が戻ってくる作文では、作文の質向上の度合いに大きな差があることがわかっています。
「他者からの評価」というと、子どもが心に傷を負わないか、ということが懸念されるかと思いますが、O小学校では「自信をもって情報を発信できる」と述べた生徒の割合が、事前が35%であったのに、事後は90%まで向上したことから、前向き・具体的なコメントをするように、など事前に一定のルールを設ければ、効果的な指導になることが期待されます。

参考文献:
Noriko H. Arai, Ryuji Masukawa
Proceedings of the 10th IASTED International Conference on Computers and Advanced Technology in Education   127-131   2007年10月
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「あるだよ言葉」とは?

Researchmapにアクセスすることの楽しみのひとつが、自分にとって完全に未知の分野の研究者の研究内容、特に研究キーワードを読むことです。
個人的によくアクセスするのが、岡島昭浩さん佐藤貴裕さんの研究キーワードと研究ブログです。
実は、(ふりがながないので)ほとんど「読めなかったり」するんですが。

お二人の研究キーワードを拝見していると、どんなご研究なのだろう、と興味がわき、わくわくしてきます。特に興味を持ったのが、「あるだよ言葉」「あります言葉」「あるよ言葉」という研究キーワード。どんなご研究なのだろう??と思い、さっそくGoogleで「あるだよ言葉」で検索してみました。

すると、Researchmapの岡島先生の研究キーワード検索のページがトップに来てしまい、その下は無関係なエントリーしか出てきません・・・「あるだよ言葉」がなんなのか、謎のまま残ってしまいました。うーん、残念!

もし、Researchmapで研究キーワード検索をしたら、そこに
  • 類語
  • 英語訳(存在すれば)
  • 簡単な意味
が出てきたら便利だと思いませんか?Researchmapの社会貢献や、研究の「見える化」にもつながりますし。
もちろん「出てきたら」といって、コンピュータが自動的に出してくれるわけではないので、Researchmapユーザが暇な時間にボランティアで項目を執筆する、という形になろうかと思いますが。
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先生からの宿題

昨日は、連休最後だったので恩師である松坂和夫先生のお宅を訪問しました。
先生には「二万日後」という素晴らしいエッセイがあるのですが、「先月、ついに(生後)三万日後を経過しました」と笑っておいででした。

帰り際、いつも先生は私に「次のときまでに考えてくるように」と宿題をくださいます。
今回の問題は・・・

積と和の差がちょうどkであるような2つの自然数n,m(ただしn>=m)の組をkから決定せよ。

という問題でした。今回は、帰りの電車ですぐに解けるような問題でほっとしました。早速はがきに答えを書いて先生に送りました。こういうことをしていると大学1年生の夏休みのことを思い出します。

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前回訪問したときの宿題は作図問題でした。

ここに正方形がある。コンパスは使わず、メモリのない定規だけで、この正方形をその一辺に平行な直線によって2分割せよ。

私は、結局解けず終いで、今回答えを教えていただきました。
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脱稿

あぁ・・・朝日が、朝日がまぶしいです。
ようやくここ数ヶ月悩みに悩んでいた本の原稿を、ようやく編集者に送りました絵文字:笑顔

編集者から、メール&電話にて「GW明けに、という展開は絶対にやめてくださいね」と釘をさされて出発した新年度でしたが、やっぱりGWに食い込んでしまいました。(でも、GW明けよりは早く原稿を上げたもんね。)

新しい数学のシリーズを、という企画が始まったのは2年前。
これまで単発的に、一般向けの数学入門書をいくつか手がけてきたのですが、どうも肝心の数学部分が不完全燃焼気味だなぁ、と思ってきました。一般書で数学のおもしろさを伝えようとすると、どうしても、「ショートケーキの苺部分」のようなところばかりをつまみ食いすることになるので。

ということで、今回はケーキ(数学)本体を食べてただく本、にしてみました。
仮タイトルは「計算とはなにか」です。どうぞお楽しみに♪
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