研究ブログ

2016年5月の記事一覧

克服すべきものに関するメモ2

『内村鑑三所感集』

批評家
批評せらるる者となれよ、批評する者となるなかれ。前者はある物を社会に供せしがゆえに批評せらるるなり。後者は何物をも供する能わざるがゆえにただ他の人が供せし物につきて批評を加うるのみ。二者の別は製作者と消散者との別なり。

竹田青嗣・西研『超解読!はじめてのヘーゲル『精神現象学』』

「批評する良心」は、「行動」という具体的場面に踏み込む代わりに、ひたすら「正しさ」の普遍性を理論的に吟味しようとする良心である。だが、ここにはすでに「批評する良心」の弱点が示唆されている。理論的に「判断」するという領域から踏み出さないことによって、「行動する良心」がぶつかる具体的現実がはらむ矛盾に出会わずにすんでおり、そのことでいわば自らの「純粋さ」を保っていられるのだ。
(中略)
だが、「批評する良心」が、「行動する良心」を普遍的な考えを欠いているとして、「偽善」や「悪」であると指摘するとき、そこには、自分の「正しさ」を求める「卓越した心情」を認めてほしい、という本音が隠れているのだ。
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